ブランドにとって、顧客や見込み客を具体的に把握することが今まで以上に重要となっています。勿論、多くのブランドはこれを理解しており、近年はそれぞれが保有するファーストパーティデータセットへの投資を行ってデータの堅牢性を確保すると共に、主要オーディエンスのエンゲージメント獲得戦略を開発するために必須となる情報も構築しています。これは消費者とのパーソナライズされた関係構築に向けては正しい一歩ですが、これだけでは十分ではありません。
ファーストパーティデータは強力ではあるものの、限定されたデータであることを覚えておきましょう。なぜなら、ファーストパーティデータは消費者が自社ブランドと関わりを持っている時の情報しか反映していないからです。言い換えれば、消費者がブランドと「共に」いるときにのみ起こるエンゲージメントを捉えているのです。消費者がブランドと関わっていないときの行動は完全に除外されています。例えば、消費者が銀行のウェブサイトを訪れるのは、銀行に関連する活動を行う必要があるときです。しかし、そのようなインタラクションでは、消費者が考えている他の事柄を捉えることはできません。その人は車の購入を検討しているかもしれません。あるいは、ゴルフのレッスンを受けたいと思っているかもしれません。
企業のマーケティング担当者は、消費者が自社ブランドにどのように関わっているかを把握する必要があります。しかし、消費者が他のブランド、プラットフォーム、チャネルにどのように関わっているかを知る必要もあります。そこで役立つのが、セカンドパーティやサードパーティのデータです。ブランドが自社のファーストパーティデータを質の高いセカンドパーティデータやサードパーティデータで補完することで、消費者をより深く理解できるようになります。ブランドは、消費者が誰なのか、どこにいるのか、何に関わっているのかを知ることができるようになり、そのすべてにより、エンゲージメントの獲得場所において、より包括的なエンゲージメントの構築が行なえるようになるのです。
先ほどの銀行の例に戻ると、銀行ブランドがファーストパーティデータに依存してしまうと、顧客との接触ポイントにおいてエンゲージメントを獲得するにあたり、顧客の金融プロフィールしか活用することができません。しかしファーストパーティデータをその他データセットと組み合わせ、補完すれば、銀行業務に限定されない形でエンゲージメントを獲得する可能性が広がります。例えば将来的な自動車購入に対する低金利の融資ローンをご案内する、あるいはブランドがゴルフコースとパートナー契約を締結していれば、ゴルフコースの会員権のプロモーションを表示することもできます。
過去 10年間、メディア業界は広告キャンペーンの実施にあたり、信頼性の高いファーストパーティデータ、セカンドパーティデータおよびサードパーティデータの利用を促進する上で必要となる柔軟性とツールを模索し続けてきました。広告主は、消費者が共感できるよりパーソナルなメッセージ、よりパーソナルなエンゲージメントの必要性を認識しているからです。言い換えれば、特定の年齢層や性別のみを考慮して開発された広告メッセージは、もう役に立たちません。
消費者がパーソナライゼーションを求める今、データの信頼性は企業のマーケティング担当者にとって大きな意味を持ちます。データは計画の立案、メディアのバイイング、アクティベーションや測定の全てでキャンペーン目標の達成に貢献しなければなりません。ほとんどのマーケティング担当者は、従来のテレビキャンペーンなどにおいて、既存のオーディエンスセグメントに縛られない発想をしています。カスタマイズ可能なオーディエンスセグメントを用いれば、マーケティング担当者は状況や目的に応じたセグメントを早急に構築し、ブランドにとって最も大切で、最大の成長機会をもたらすオーディエンスセグメントのエンゲージメントを獲得することができます。
メディアプランニングやバイイングは複雑な業務で、さらにデバイスやチャネルの細分化が複雑性に追い打ちをかけていいます。テレビ視聴の最新実態に目を向け、CTV (コネクテッドテレビ)や動画ストリーミング配信を利用する消費者の数を踏まえると、マーケティング担当者は従来のテレビ枠のバイイングにおいても、データドリブンな戦略を活用するための能力やスキルをより必要としています。
先見性のあるブランドは既に機会を捉えていますが、多くのブランドにとっての課題は、メディアプランニングとバイイング業務をつなぐ一貫性の欠如です。プランニングとバイイングで異なるオーディエンスセグメントが利用されることは、決して珍しくありません。これを解消するに、カスタムオーディエンスセグメントをリアルタイムで作成するソリューションの統合が求められています。
現代のメディアプランニングとバイイングにおける重要な要素は一貫性です。広告主は、特に従来のテレビ広告枠のプランニングとバイイングにおいては、一貫したオーディエンスセグメントを用いた取引に頼っています。新たなプラットフォームやチャネルの台頭によってメディアプランニングとバイイングがさらに複雑化する中、マーケティング担当者はテレビ広告枠のバイイングと同レベルの一貫性を求めだす(求めるべき)でしょう。賢明で先見性のあるブランドは、テレビと類似する環境を整え、テレビ広告枠の取引に引けを取らない信頼性を提供するソリューションに傾くことが予想されます。このようなソリューションは、マーケティング担当者がプラスの費用対売上(ROAS)を達成し、効率を改善して無駄を排除することを支援するからです。