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COVID-19収束後を勝ち抜くための広告戦略と求められる効果測定

1 minute read | Kayo Osaka, Vice President, Marketing Effectiveness – Japan | May 2020

COVID-19に伴う外出規制により、消費者の行動は大きく変化しました。オンラインショッピングをしたり、メディアに触れる時間が増え、これまで馴染みのあった多くの商品が売り切れになったり、自身のニーズが変化したことで、消費者はこれまで買ったことのない商品やサービスを試しています。こうした背景から、当然のごとく多くの企業が2020年度のマーケティング戦略の再考と軌道修正を求められています。しかし、その答えが必ずしもマーケティング予算の削減ではありません。

多くの企業は、消費者によるメディア消費が増えているにも関わらず、広告費を凍結させています。広告費の削減に伴う危険性と、それが中長期の売上に及ぼす影響について理解することは極めて重要です。今現在の状況に対応するだけでなく、先々に備えた計画を練ることの重要性が、かつてないほどに高まっています。

COVID-19収束後の生存競争に勝利するためには、次のアクションが重要となります。

  1. ブランド存続に向け、広告宣伝費を維持または増加する
  2. 投資のリターンを正確に測り、この結果に基づきマーケティング戦略の判断を下す

1.生存競争勝利のためのブランド投資

不況時に広告費を削減することがむしろ逆効果なのは、過去の歴史から明らかになっています。不況の最中の広告費維持が長期的には利益をもたらすことは、様々な研究から示唆されています。BielとKingは、『不況時の広告』(1990年)で、「不況時の広告削減は、大幅な利益の増加をもたらすことなく、不況の最中やその後も売上に打撃を与えた。投資金額に差はあれ、広告費を増やした広告主は、広告費を減らした広告主に比べ、より多くのシェアを獲得している」と述べました。

ニールセンのマーケティング・ミックス分析からは、短期間でも広告を停止すると、ブランド・エクイティ、流通、製品価格などからなるベース売上と、マーケティング活動の成果による売上増分で構成される収益が、長期間に渡り著しく損なわれる危険性が示唆されました。それに加え、長期効果モデル分析の結果、2020広告を今後取りやめた場合、2021年に11%の売上減少につながる危険性が明らかになりました。また、広告を一定の期間停止すると、再度広告を開始してもその効果が損なわれることが分かっています。広告停止の空白期間により失われたブランド認知を取り戻すのにはそれなりの時間を要します。

困難な時期に出費を控えるのは一見当然のように思うでしょう。しかしながら、前述の通り、短期的な収益維持のために広告費を削ればうまくいくかというと、決してそうはならないことは明らかです。広告費の維持または増加が、シェア拡大に寄与し、結果として沈滞期によるマイナス効果の影響を軽減することに繋がります。

2.投資のリターンを正確に測り、マーケティング戦略の判断に

目まぐるしく変化する環境では、明確かつ正確なマーケティング投資の効果測定プランを持つことが、そのまま競争上の優位性に直結します。投資に対する正確な測定計画を持つ企業にとっては、状況に応じて新たな基準を設け、投資利益最大化とシェア拡大への道筋を見つけることが可能だと言えます。

測定計画の正確性をいかに向上させるか

  1. 客観性を欠く自己評価を行うのではなく、施策の実行者と評価者を切り分け, 公平な分析を行うこと。
  2. メディア施策に限定せず、あらゆるビジネス・ドライバーの要素を包括したマーケティング・ミックス手法を用いること。
  3. 自社ブランドのパフォーマンス測定に際し、競合を含めた市場全体のROIのベンチマークを参照すること。
  4. 成果を検証するKPIを再考し、意思決定に反映させること。

メディア施策に留まらず、ビジネスに影響を及ぼす全ての要素を包括したマーケティング・ミックス手法を用いて投下資本を正確に分析することの重要性は、かつてないほどに高まっています。例えば、2019年に消費税増税の影響を考慮せずにメディア施策要素のみでマーケティング・ミックス分析を行えば、正確な結果は得られません。そして2020年の今、COVID-19の影響を測ることができない状態で、ビジネス課題について正確な意思決定を下すのにマーケティング・ミックス・モデル分析に期待することはできません。今年行われたニールセンのマーケティング・ミックス・メタ分析によると、ビジネス・ドライバー全てを包括していないモデルでは、平均47%の収益結果の過大評価がなされたことが明らかになりました。適切な非メディア施策のビジネス・ドライバーを含まない分析を用いた場合、最大で実に68%ものROIの過大評価が算出される危険性が指摘されています。

ROIという観点からは、市場における自社ブランドの立ち位置を把握することは極めて重要です。例えば自社のテレビ広告のROIは単独で見ると、一見他のメディア施策よりも効果を上げているように見えるかもしれません。しかし、カテゴリー市場全体のROIと比較した結果、高く見えていたROIが、実際には同一施策ROIの国内平均を下回っており、テコ入れが必要であることがわかるといったケースが多々あります。ニールセンは、様々な業界からなる世界最大のROIデータベースを有しており、ニールセンROIコンパスは、それをもとに最良かつ信頼に足るベンチマークを提供します。

新しい環境にある現在、上記をもとにKPIを今一度見直し、市場の現状を反映させることは極めて重要です。新たなKPIに基づいた戦略的意思決定を行う上で、マーケティング・ミックス分析は、主要KPIがターゲットに達したかの検証に大いに役立ちます。

COVID-19はあらゆる業界に多種多様な影響を及ぼしました。言うまでもなく、その余波は我々のビジネスに長期間留まることが予測されます。広告と効果測定プランについて今下す決定が、COVID-19収束後の勝者を決めるといっても過言ではありません。

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