2021年日本のインターネットサービス利用者数/利用時間ランキング
2021年は、多くの日本の消費者にとって新型コロナウイルスの感染拡大や東京オリンピック・パラリンピックの開催など、通常とは異なる1年となりました。デジタルの利用では、従来型携帯電話(ガラケー)からスマートフォンへの乗り換えが進んだことによりシニア世代の利用者が増加したことや、これまでよりも動画サービスを長時間視聴するようになったことなど、デジタル化が一段と進展した様子が伺えます。
昨年に引き続き、デジタルサービスの利用者数は多くのサービスで拡大しました。PCとモバイルの重複を除いたトータルデジタルのリーチTOP 10サービスに着目すると、10人のうち約7人がTOP2サービスのYahoo JapanやGoogleを月に1回以上利用していました。3位以下のサービスにおいても日本人口の半数以上がLINEやYouTubeを利用していました(図表1)。これらの上位サービスは、これまでも多くの人に利用されており、すでに成長の余地は少なくなっていると考えるマーケターも多いでしょうが、シニア世代のデジタル利用の拡大に伴って利用者が増加し続けています。
日本のシニア世代の割合は他国と比べても高く、2020年国勢調査によると、60歳以上の人口は4,263万人となっており、全人口の33.8%を占めています。シニア世代は、「デジタル利用に積極的ではないのでは?」といった考え方から、デジタルマーケティングではターゲットから外されがちかもしれませんが、近年では積極的にテクノロジーや社会活動に携わっている「アクティブシニア」の存在に注目が集まっています。また、新型コロナウイルスによる影響が長期化している中、重症化するリスクが高いと言われているシニア世代の中には、対面での消費活動の代わりに、デジタルサービスを活用し始めた人も多いでしょう。実際、2021年ニールセン インターネット基礎調査(Nielsen Internet Basic Report)によると、60歳以上のインターネット利用者は、スマートフォン利用者を中心に237万人増え、日本のインターネット人口全体の約3割を占める規模に成長しています。マーケターは、このようなシニア世代のデジタル化を踏まえ、デジタルマーケティングではコアターゲットとされることの多い現役世代に加えて、平均的に子育て中の世代に比べて自由裁量で使えるお金が多く、また貯蓄額も多い傾向にあるシニア世代のデジタル利用の動向にも注目すべきでしょう。
もう一つの今年の大きなデジタル利用の変化として、多くの消費者が長時間動画を視聴するようになったことが挙げられます。新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもりが長期化する中、在宅時間を楽しむ主なエンターテインメントとして、消費者の中でインターネット動画の視聴が習慣化していることが分かります。実際、利用者数以外の指標であるGRPと利用時間シェアに着目すると、リーチでは4位だったYouTubeがGRPと利用時間シェアともに1位となっていました(図表2-3)。マーケターは、キャンペーン目的に合わせて、利用者数などの指標だけでなく、利用時間やフリークエンシーを考慮した数値も見た上でコミュニケーションを取る場所を検討すると良いでしょう。
消費者は、ここまで見てきたTop10に入るようなメディア以外にも、ITビジネス、女性誌、新聞社など、個別のニーズに合わせたコンテンツを提供するメディアを利用し、情報を収集しています。これらのメディアでは、コンテンツの特性によって特定の属性の利用者層が多いケースもあります。例えば、ITビジネスと女性誌、新聞社の3つのジャンルのメディアでは35-49歳の利用割合が高くなっており、この年代に効率的にリーチできることがわかります(図表4-6)。また、ビークルによっては、性年代などの特定の属性の利用時間が長いケースや利用頻度が多いケースもあるため、マーケターは、全年代のリーチだけでなく、ターゲットリーチやターゲットGRP、ターゲットのフリークエンシー、利用時間にも注目すべきでしょう。また、冒頭で見たようにシニア世代のインターネット利用が拡大していくことで、今まで若年層にリーチしやすいと考えていたメディアのオーディエンスも変化している可能性もあります。そのため、定期的に各メディアがどのような属性の人に利用されているのかを把握した上で、活用していくことが重要です。