新しいコンテンツが日々更新されるダイナミックなメディア環境で、近年日本では視聴者が自分の嗜好や視聴スタイルに合わせてサービスを選択する傾向は強くなり、各メディアに対してお金を払う意欲も高まってきています。動画アプリ市場の場合、無料で視聴できるコンテンツが多数ある中で有料動画アプリの利用が拡大しているのは、一部の消費者にとっては豊富な無料オプションの中から自分好みのコンテンツを探すだけでなく、お金を払ってでも有料動画アプリで自分好みのコンテンツを素早く探し出すことに対しての価値が高まっていることが分かります。
まず、それぞれのサービス利用者数の増加率に注目すると、有料動画アプリ利用者増加の傾向は無料動画アプリ減少によるものではないことが分かります。無料動画アプリはスマートフォン利用者の過半数が利用しており、有料動画アプリの利用者数を遥かに超えています。その一方で、無料動画アプリの利用者数増加は6%に留まったのに対し、有料動画アプリの利用者数は昨年から40%増加し、その増加率は年々拡大しています。
コンテンツを提供する企業としては、消費者のサービス利用傾向の変化を把握することが求められており、常に消費者の視聴トレンドを追いながら最適にアプローチできる魅力的なコンテンツを創り出すことが一層重要となります。2019年の12月には1,170万人が有料動画アプリを使用し、前年の836万人から大幅に増加していることが分かります。つまり、これらのアプリで提供されているコンテンツに価値を見出し、魅力的に感じるコンテンツに対してはお金を払うことに抵抗のない消費者が増加している、ということが言えます。
女性消費者の有料動画に対してのニーズが拡大
各動画の利用状況を男女別にみると、女性は男性の利用者数を上回り、有料動画アプリに対しての関心が高いことが分かります。米国を含む他の市場でも女性はメディア視聴が活発な消費者であり、動画市場においても、有料動画アプリへシフトしてきている傾向が伺えます。コンテンツ提供する企業としては、様々なビジネスモデルの検討やコンテンツ提供の導線を検討する上で、このような属性ごとに利用者数の推移を把握することは非常に重要になります。
一方で、コンテンツを制作する企業や広告主は男性の動画利用に注目することも重要です。男性は女性よりも無料動画アプリの利用回数や利用時間などのエンゲージメントが高く、女性よりも1ヶ月あたりの利用回数では9回、利用時間では2時間ほど多く利用しています。それに対し、女性は男性よりも有料動画アプリを1ヶ月あたり利用回数では3回、利用時間では約30分多く利用していることが分かります。
当社アナリストのコヴァリョヴァ・ソフィヤは、次のように述べています。「コンテンツを提供する企業がより多くのメディアオプションを消費者に提供することで、視聴者が自分の嗜好や視聴スタイルに合わせてサービスを選択する傾向は増々強くなるでしょう。日本では無料動画アプリの利用が昨年から引き続き主流となっていますが、有料動画の利用者も増加していることから、お金を払ってコンテンツ視聴することに対しての消費者の抵抗感が薄まっていることがわかります。その結果、有料動画アプリの利用拡大の可能性が高まる一方で、無料動画アプリのコンテンツを提供する企業とっては市場競争が激化し、競争の基準が高まるのではないでしょうか。」