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新型コロナウイルス禍において消費者に共感される広告とは

1 minute read | ニールセン デジタル アナリスト コヴァリョヴァ・ソフィヤ | May 2020

広告およびメディア業界は今まで数多くの危機を乗り越えてきましたが、新型コロナウイルス(COVID-19)ほど全世界で日々の状況が変わり、長期的な影響を及ぼす事態は想定できていなかったのではないでしょうか。似た状況として新型コロナウイルス(COVID-19)は2008年の金融危機と比較されることがありますが、現状と当時のメディア環境とは大きく異なります。昨年、日本のデジタル広告費はテレビ広告費を上回ったのに対し、当時はデジタル広告が浸透しておらず、比較的新しいメディアという位置づけでした。そのため、この状況下でメディアプランを立てていくために参考にできる前例や事例がないことから、各ブランド担当者はこの新しい危機に対してどのように対応すべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

■消費者のメディア視聴:需要と供給のアンバランス

多くのブランド担当者は今、広告に投資すべきかどうか疑問を抱いていることでしょう。そして多くの企業は実際に新型コロナウイルス(COVID-19)との関連によるマイナスイメージ回避や個人消費に対する期待の低下などを理由に広告を控える動きがあります。一方でメディア消費は各国で増加しており、自宅で過ごす消費者が急激に増えたことから、ブランドが消費者とつながる絶好の機会になっています。つまり、広告在庫は増加しているのに対し、広告主の多くが広告出稿を避けることによって、デジタルメディア市場においてアンバランスが生じています。

新型コロナウイルス(COVID-19)の影響が日本よりも早くにピークを迎えた海外の広告出稿状況に着目すると、この新しい危機に対して各ブランドがどのように対処しているかについてヒントを得ることができます。一部のブランドにおいてはこの増加した消費者との接点を活用して積極的にコミュニケーションを取るところもあり、小売やサービス、メディアの業界などでは、デジタルの広告出稿が新型コロナウイルス(COVID-19)前よりも増加していました。このようなブランドはどのように消費者とのコミュニケーション方法を変えているのでしょうか。

消費者はこれまで以上にブランドからの真実、オーセンティシティ(ブランドらしさ、真摯な姿勢)、そしてつながりを求めています。このような消費者のマインドの変化に伴い、海外においては多くのブランドがコミュニケーション戦略を転換させ、社会貢献活動につながるコーズマーケティングにシフトしています。各ブランドが今消費者に「何を」伝えているかは大きく分けて3つの特徴、それらを「どのように」伝えているのかについて2つの特徴が見られました。

■各ブランドは消費者に今、「何を」伝えているのか

1.医療機関/医療従事者の支援

医療機関への寄付や医療従事者へのサービスの提供など、困難な環境下で日々貢献している人々に対して自社がどのような取り組みをしているのかを発信しているブランドが増加しています。

2.啓蒙

ソーシャルディスタンスの重要性を伝えているブランドもあれば、自社製品などを使って手洗い・うがい方法など、現在の状況に合わせて正しい衛生知識について消費者に対して情報発信するブランドもあります。

3.人を支える

製造ラインを変更してマスクや消毒液など、今、消費者に求められている製品の製造を開始している企業もあれば、休校や在宅勤務などによる消費者の在宅をサポートするサービスを提供する企業も見られます。どちらの場合でも、ブランドは消費者に対して共感し、今必要とされるサービスや商品を提供することに重点をおき、消費者とコミュニケーションをとっています。

■「どのように」消費者に伝えるのか

各ブランドは、消費者に何を伝えるかだけでなく、それをどのように伝えるかについても見直す必要があります。その上で重要となるのは、ターゲティングとメディア選定です。

1.ターゲティング

適切なターゲティングは、このような環境下においては特に重要になります。各ブランドメッセージが消費者の共感を得るためにも、そのメッセージを適切な人に届けることに重点を置く必要があります。クリエイティブが医療従事者への支援などのチャリティーフォーカスに変わることによってブロードターゲティングが設定されがちになりますが、より適切な消費者とのつながりを得るために各ブランドは、本来そのメッセージが誰に伝わってほしいのかを明確にした上でターゲット設定を見直す必要があります。

2.メディア選定

消費者の在宅時間が増えたことによってメディア消費は増加し、利用されるメディアやその利用方法にも変化が見られます。昨日までは当たり前だったことが今日は通用しない可能性があり、各ブランドは自社のターゲットにリーチするために正しいメディアを選定しているかを再確認する必要があります。例えば、今までは通勤中にスマートフォンでニュースサイトを利用していたのが、在宅勤務になり仕事前に自宅の大画面テレビでニュースを見ることにシフトした人もいるでしょう。新型コロナウイルス(COVID-19)の影響によって、テレビでオンラインコンテンツを視聴するなど、今までとは異なる方法でメディアを利用する人も増えています。このような動きを正確に把握することで各ブランドがより効果的に自社のターゲットと関わることが可能になるでしょう。

一部の日本企業においても、海外の事例のようなコミュニケーションを取る企業も見られるようになりました。危機への対処手法は数多くあり、正しい答えはありません。しかし、どの業界においても共通していえるのは、このような環境下においても消費者に寄り添うコミュニケーションは重要であり、今ブランドコミュニケーションを控えるべきではないということです。

短期間でも消費者とのつながりを停止することで今までの優位なポジションは維持できなくなり、長期的には売上減少につながる危険性があります。消費者は、このような環境下だからこそ、寄り添ってくれたブランドを評価することになるでしょう。そして新型コロナウイルス(COVID-19)が収束したあとに、今、革新的なアプローチを取ったブランドは、慎重なルートを辿ったブランドよりも大きなアドバンテージを持つことになるでしょう。

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