2020年、年明けと共に新型コロナウイルスの感染が拡大すると、あらゆる規模、あらゆる業界のブランドがマーケティング予算を削減し、その多くが資金節約のためにブランド認知活動を一時停止または縮小し、残された予算とリソースを新規顧客の獲得ではなく、既存顧客の維持に集中させました。
このようなローワーファネルの戦術的施策は消費者の行動を直ちに喚起するため、不安な状態にありながらも、上司や経営陣に結果を報告する義務があるマーケティング担当者の目には魅力的に映るでしょう。しかし、ROI (投資対効果)を優先するあまりにブランド認知などのアッパーファネルの優先事項をないがしろにすれば、長期的なブランド成長を維持することはできなくなります。
マーケティング担当者は、新しい現実に対応するだけでなく、将来の成功への道筋をつけるために、戦術を再調整することを学びました。成長には、アッパーファネルのブランド構築とミッドファネルおよびローファネルの取り組みを連動させた、バランスのとれたマーケティング戦略が必要です。ここでは、ブランドがどのようにバランス型マーケティング戦略を実施することができるかを説明します。
カスタマージャーニー全体を重視
消費者はブランドのことを知らなければ、興味を持つことはできません。そのため、マーケティング担当者はブランド認知活動を通じて新規の見込み客をターゲットとし、将来の販売につながるパイプラインを構築する必要があります。このような見込み客がパイプラインに入ると、ローワーファネルの取り組みで影響を与えられる消費者の層が広がり、潜在的な収益が増加します。実際、ニールセンの最近の調査によると、認知度などのブランド指標を1ポイント上げると、売上が1%増加することがわかっています。
現在の焦点は成長ではなく維持であると主張するブランドは、ブランドで素晴らしい経験をし、忠実である顧客でさえ、再訪問するためのリマインダーを必要とすることを忘れてはなりません。最も知名度の高いブランドでさえ、消費者の頭の中に残るように、アッパーファネル戦術を実行し続けています。製品やサービスの選択肢やアクセス方法が多様化している今、消費者の記憶に残り続けることが、売上を左右する可能性があるのです。
見込み客に対し、適切なチャネルと適切なメッセージでターゲティング
ブランドに接触したばかりの消費者の注目を獲得し、売上を増やすには、消費者の共感を得られるブランドメッセージを発信することが重要です。マーケティング担当者は主要トレンドやニュース、イベントを検討し、自社の製品やサービスがそれらにどのように合致しているかを明確にすることで、ブランドの関連性を強調することができます。オーディエンスについてより深く知ることで、その人たちの個人的なニーズに対応するメッセージを作成し、自分たちのビジネスを評価している消費者に感謝を示すこともできます。同様に、ブランドに接触したばかりの消費者に対し、ブランドロイヤルティの高い顧客と同様の行動喚起を呼びかけても、反応を得られないこともあります。マーケティング担当者は、活用するメッセージを相手に合わせて慎重に検討し、各オーディエンスがカスタマージャーニーの次のステージに移ることができるよう、背中を押す必要があります。
チャネルを選択する時でも、マーケティング担当者は同様の配慮をすることが求められます。9つのチャネルでキャンペーンを実施した保険ブランドに関するニールセンの調査によると、大方のチャネルは短期的な売上に貢献したが、ブランド認知や検討には予算規模に反し、効果を発揮しなかったことがわかりました。ブランドが発信するメッセージに対する消費者の反応を考慮する際に、チャネルの選択はメッセージの内容と同じくらい大切になります。いかに内容が練られていても、各プラットフォームに適したメッセージを用意できなければ、予算の無駄遣いとなる可能性があるからです。
経営陣に対しアッパーファネル施策の重要性を説得
経営陣は常に結果を求めますが、マーケティング担当者は自らの組織に対し、売上に対する長期的なブランド構築の潜在的な影響がいかに重要であるかを理解させ、浸透させるべきです。アッパーファネルマーケティングの長期的な売上効果やブランドエクイティ効果を測定して、ブランド構築の効果を示すことで、経営陣に、売上結果に対する忍耐が報われるという確信を与えることができます。
ローワーファネルの施策は短期的な売上に貢献するため、経営陣の受けも良いが、多くの場合、長期的な売上には効果を発揮しません。そのため、コンバージョン優先のマーケティングに集中すると、売上や長期的なブランド成長が衰退します。ローワーファネル施策だけでは、ブランドを維持することはできないのです。逆に、アッパーファネルマーケティングは、すぐにROIを示す効果は低いものの、ニールセンの調査によると、将来のパイプラインを育成するだけでなく、短期的な売上にも貢献することが分かっています。そのため、アッパーファンネルの活動は、ミックスの中でより重要視されるべきなのです。
マーケティング活動の成果は、売上のみで評価されるべきではありません。アッパーファネル、ローワーファネルのアクティベーションは異なる目標に対して実施されることから、共通の指標で両方のファネルの成果を計測することは、それぞれの効果の積み上げを過小評価することになります。アッパーファネルで発信されるメッセージ評価には認知や検討などの指標を用い、ローワーファネルからのメッセージに対しては、コンバージョンをトラッキングして評価することができます。コンバージョンは売上だけではなく、ニュースレター配信登録、ホワイトペーパーのダウンロード、ウェビナー出席など、ブランドの目的に応じて様々な指標が含まれます。行動アトリビューションを把握する測定プラットフォームを活用することで、ブランド構築や認知度向上活動の長期的な効果を確認し、成功や改善の領域を特定することができます。
現在の市場環境を鑑みると、コンバージョンを目的としたマーケティングによる短期的な成果は良いニュースとして受け止められますが、長期的なブランド成長につながらない場合もあります。多くのブランドがパンデミックの感染拡大状況に対応し、予算を調整していますが、マーケティング戦略についても同様に、状況に応じて調整が行われるべきでしょう。ビジネス成長を継続的に達成するには、マーケティング担当者はファネル全体をバランス良く考慮した計画を策定する必要があります。
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