デジタル広告では、ユーザーの登録情報や過去にアクセスしたサイトの情報などを活用したターゲティング配信が多く活用されています。例えば、一度自社サイトにアクセスした人に対して、別のサイト上で自社の広告を配信するリターゲティング広告など、多くのターゲティング広告でサードパーティクッキーが利用されてきました。しかし近年EUにおける一般データ保護規則(GDPR)やアメリカのカリフォルニア州における消費者プライバシー法(CCPA)の成立などにより、個人情報のより厳格な管理が求められ、サードパーティクッキーの利用が制限される動きが出ています。Appleは既にITPにより制限を開始し、Googleも2022年から制限を開始する予定であると発表したことを受け、デジタル広告のターゲティング配信は大きな変革を求められています。
来たるクッキーレス時代に向け、様々な対応策が検討されている中、現段階で注目されている効率的に広告をターゲットに届けるための方法についてご紹介します。
クッキーレス時代のデジタル広告の効率的な配信施策は、現在進行形で開発が進んでいるものが多いなか、代表的なものは以下のように分類されます。ここからは、それぞれの方法についてご紹介します。
■サードパーティクッキー以外の識別子を用いて個人を特定して配信する方法
①特定のメディア内で配信する方法
②メディア横断的に配信する方法
■識別子を使わずに配信する方法
③コンテキストマッチ
④メディアデータを活用して利用者属性を基に配信する方法
①特定のメディア内で配信する方法
この方法は、特定のメディアで利用者に会員登録してもらい、個々人にユニークなユーザーIDを付与することで、メディア内での行動履歴や登録情報を紐付けて、個人を特定します。ユーザーIDを1つ発行するだけでさまざまなサービスが使えるようになるなど、利用者へ利便性の高いサービスを提供することで得られる行動履歴を活用して、自社メディア内で利用者ごとに適した広告を配信しています。この方法では、利用者に登録してもらった属性情報やプラットフォーム内での利用・購買情報という詳細な情報が活用できるため、より高い精度でターゲットに広告を配信できる点がメリットです。
②メディア横断的に配信する方法
①の方法では、特定のメディアやそのグループ企業の提供するサービス内に限定されてしまうため、特定のメディアに限らず横断的に個人を特定できる手法が、最近注目されています。この方法は、現状ではiOS、Android OSの端末に割り振られている広告IDを用いた方法が主流です。
この方法の一例として、ニールセンが提供する「Nielsen Japan Mobile Netview Powered by Lotameセグメント」は、ニールセンが提供するモバイル視聴率データ Mobile Netviewの調査パネルの属性と行動履歴データを教師データとして、Lotameの保有する配信対象プールに突合し、モデリングにより拡張することで広告の配信対象をセグメントとして提供しています。前述したメディア横断的に広告を配信できることに加え、ニールセンの調査パネルによる「人」ベースでの性別、年代、年収といった属性と、オンラインショッピングや動画共有サービス、ソーシャルネットワーキングサービスの利用状況(ヘビー、ミドル、ライト)などの行動履歴を基に、配信対象を決定できることが特徴です(図表)。ニールセンの本ソリューション以外でも、一般に広告IDを利用した方法では、サードパーティクッキーを活用したターゲティングと同じように、他のメディア上での行動履歴をもとにメディア横断的にターゲティングできる点がメリットです。
一方で、広告IDを用いた方法は将来的に使用できなくなる可能性もあるため、今後は識別子を共通ID(ユニバーサルID)に変更していくという動きが見られます。共通IDとは、メディアを横断して個人を特定するために利用者に付与されるIDのことで、The Trade Deskが開発したUnified IDなどが挙げられます。
ここまでは、サードパーティクッキー以外の識別子を用いて個人を特定して配信する方法についてご紹介してきました。ここからは、識別子を使わずに配信する方法についてご紹介します。
③コンテキストマッチ
コンテキストマッチとは、Webページのキーワードや文脈、画像などを自動的に解析し、その内容に関連する広告を配信する方法です。似たような方法として、Webページをカテゴライズしてそのカテゴリーの広告を配信するコンテンツターゲティングや、Webページ内のキーワードで一致した広告を配信するキーワードターゲティングがありますが、コンテキストマッチではキーワードの前後の文脈なども含めて解析し、適合した広告を配信する点が異なります。コンテキストマッチで重要なWebページの解析技術は、サービスの差別化を図るために各社が工夫を凝らしたものが多く存在します。特定のWebページを訪問した利用者はその内容に興味があるという前提に立っており、個人を特定することなく興味がある人に広告を配信できる点がメリットです。
④メディアデータを活用して利用者属性を基に配信する方法
デジタル広告においても、当初はテレビなどのマス広告と同様に特定のメディアの広告枠を買い取り、掲載する純広告が多かったのですが、その後ターゲティング配信が主流になりました。その流れが最近のサードパーティクッキー規制によって変化が求められ、改めて枠広告に注目が集まっています。当初、枠広告のメディア選定では、性別・年齢をはじめとしたメディアが提供する利用者属性データからターゲットの利用者数、全利用者数に占めるターゲットの含有率等を算出し、それを基に配信するメディアを決定する方法を採用していました。その際に、メディアごとに提供されるデータが異なっているために個々のメディアが持つオーディエンスの比較ができないということがあり、メディアを横並びで比較するためのデータの必要性が課題として挙がっていました。ニールセン デジタルコンテンツ視聴率(DCR)は、メディアを横並びでオーディエンスを比較することが出来るデータを提供していることに加え、従来のビーグル単位はもとより、ビーグル内のコンテンツ単位で利用者の性年代属性を把握することができます。このようなメディアデータを活用して、例えばリーチの最大化を狙いたいのであれば、ターゲット利用者数の大きいメディアを選定する、またターゲットへの効率的な配信を目指すのであればターゲット含有率の高いメディアを選定するなど、キャンペーンの目的に応じたメディア選定を実現します。今回は、クッキーレス時代のデジタル広告の効率的な配信施策についてご紹介してきました。広告の配信にあたっては、広告の目的やターゲットの種類に応じて最適な方法は異なる可能性があります。そのためキャンペーン毎に最適な方法を検討して適用することが重要です。さらに、より効率性を上げられるように日々工夫しながら運用していくことが重要であると考えます。