4月7日にCOVID-19による緊急事態宣言が発出されて以降、在宅時間が増えたことによってメディアの消費動向は大きく変わりました。休校や企業の在宅勤務の推奨などがメディアの利用時間を増やしただけでなく、コンテンツの消費方法にも変化をもたらしました。5月末に緊急事態宣言は解除されましたが、学校では新しい生活様式を踏まえた対策によって分散登校や一部ではオンライン授業を取り入れ、企業においてはより柔軟な働き方に切り替えている会社が多いことからも、COVID-19によって変化したメディア消費動向は今後しばらく続くことが予想されます。
中でもPCの利用は、在宅の影響で大幅に増加しました。家にいることで、移動中や隙間時間にコンテンツを消費する時間が減少し、自宅で大きな画面でじっくりとコンテンツを視聴する時間が増えたことが要因と推測されますが、緊急事態宣言が明けた今も消費者は自宅に留まり、PCの利用は高い推移を維持しています。健康や安全に対する意識が高くなる中で、今後も第二波により再度在宅時間が増加する可能性があることからも、マーケティング担当者はメディア消費動向の変化を正しく把握し、この新しい視聴習慣に合わせたメディアプランを組み立てることが一層重要になります。
在宅による影響は年齢層によって異なる
「ステイホーム」はどの消費者のメディア消費にも影響を与えましたが、中でも休校や在宅勤務によって通勤・通学時間が減った若年層では、PCからのインターネット利用時間が大幅に増加しました。実際に年代別にPCからのインターネット利用時間をみると、18-34歳と35-49歳ではそれぞれ20%と28%増加していたのに対し、50歳以上では8%に留まっていました。同時期に、スマートフォンからのインターネットの利用時間が減少していないことを考えると、若い年齢ほど単にデバイスを切り替えるだけでなく、デジタルメディアの利用時間が全体的に増加していたことがわかります。
拡大したメディア消費時間を活用するには
前述にあるように、通勤・通学中にスマートフォンで消費されていた時間の一部は、在宅期間中PCにシフトしています。つまり、各サービスは移動中や隙間時間に利用される代わりに、場所を変えずにまとまった時間を使って利用されるようになっていることが推測できます。実際に各年代でのPCの利用時間をコンテンツカテゴリー別でみると、すべての年代で「サーチ/ポータル、コミュニティ」の利用時間が増加していました。特に隙間時間に利用される代表的なサービスブランドとして、すべての年代においてYahoo!の利用時間が大幅に増加し、35歳以上ではTwitterの利用時間の増加も目立ちました。また、「エンターテイメント」の利用時間の多い18-34歳では、このカテゴリーのPCの時間も増加し、35歳以上ではPCの「ニュースと情報」カテゴリーの利用時間が増加していました。
このようなデバイス利用の変化はマーケティング担当者にとって何を意味するのでしょうか?マーケティング担当者は、消費者が時間を費やしている場所だけでなく、デバイスによってサービスの利用状況がどのように変化しているのかを理解し、メディアプランに取り入れる必要があります。 同じサービスを利用している場合でも、PCにシフトしたことでまとまった時間で利用する機会が増えているケースや、自宅のWi-Fiを利用するケースも増えていると考えられます。つまり、スマートフォンと比べて、例えば動画などのコンテンツを長時間、じっくりと視聴している可能性もあるのではないでしょうか。
ニールセン デジタル株式会社代表取締役社長 宮本 淳は、次のように述べています。「現在の状況がいつまで続くのか、変化したメディア消費動向が長期的に定着するのかはまだわかりませんが、今後も第二波により再度在宅時間が増加する可能性があることからも、引き続きPCの利用が堅持されていく可能性があります。マーケティング担当者は、環境などの外的要因がメディア消費に対してどのように影響するのかを理解した上で、消費者とのコニュニケーションを再検討する必要があります。ブランドのメッセージ内容とトーンは依然として重要になりますが、消費者がそのメッセージを受け取るタイミングや場面、そしてデバイスなどの要素も、メディアプランを組み立てる上で一層重要になってくるでしょう」。