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パンデミック禍のオンラインショッパー

1 minute read | ニールセン デジタル アナリスト マ・ピンチュアン | July 2020

サイト閲覧数を減らして、購入を増やす

2020年に入ってから、多くの人々はこれまでと違う日常を送っています。3月に臨時休校が要請され、4月には緊急事態宣言が発令されたことに伴って、日常生活のあらゆる面で変化が現れました。特に日々の買い物においては、オンラインショッピングの需要が拡大しています。

緊急事態宣言は5月に解除されたものの、新たな感染者の報告は続いており、感染第2波への懸念が高まっている中、今の購買行動は少なくとも数か月は続くことが予想されます。また、現状のようなオンラインショッピングの利用動向が今後も継続されることで、この新しいスタイルが定着していく可能性もあります。

実店舗での購入が減り、オンラインでの購入が増加

緊急事態宣言中、スーパーやコンビニ、小売店が営業時間を短縮していました。また「3密」(密閉、密集、密接)を避けるべく、多くの消費者が店舗での購入からオンラインでの購入にシフトしました。

実際に、3月中旬と5月上旬に行ったアンケート調査結果によると、実店舗からの購入が減ったと回答した人は増加し、一方オンラインでの買い物が増えたと答えた人は、緊急事態宣言前の30%から緊急事態宣言中は44%にまで増えました(図表1)。また、パンデミックが終息した後も、オンラインでの購入頻度を減らさないとした人は87%に及びました。今後もしばらくはオンラインショッピングが続くと考えられます。

Online Shopper under Pandemic Disasters

日用品の購入がサイト閲覧数を減らす

将来が見通し辛い時期におかれた消費者は、大きな出費を抑え緊急性のない支出を後回しにして、必需品の購入に充てるように、お金の使い道の優先順位を見直す傾向があります。今回の緊急事態宣言中においても、今まで実店舗で購入していた日用品をオンラインで購入する傾向は高まってきています。

商品の買い方は、何を買うかによって変わります。例えば、新しい商品や高価なものを購入する場合、私たち消費者はじっくり時間をかけて口コミを参考にしたり、複数の店舗(オンラインショッピングの場合は、複数のサイト)で値段を見比べたりするでしょう。一方、よく使う商品、例えば日用品の場合は、値段などを見比べることが少ないため、購入までの検討プロセスも短くなる傾向があります。実際に、緊急事態宣言中、オンラインショッパーは後者に近い行動を示しました。

さきほど見たアンケート調査結果に加えて、ログデータをベースにオンラインショッピングの実際の利用状況を見ると、COVID-19前(1月と2月)と比べて、COVID-19中(3月と4月)の1日当たりの利用回数は2%減少していました(図表2)。

Total session of online shopping

ログデータからの利用回数は、オンラインショッピング・サービスの訪問回数を指しており、購入および閲覧のみの訪問が含まれます。前述の購入頻度が増加したとのアンケート調査結果を踏まえると、訪問回数が微減したということは、緊急宣言中、オンラインショッパーは購入検討のためのサイト閲覧数を増やすことなく、今までよりも多くの回数、商品を購入していたことを示しています。

購入検討のためのサイト閲覧数が少ないということは、オンラインショッパーはその商品を購入することを前提にサイトを利用しており、また日用品などの消費財を購入していたと考えられます。なぜなら、在宅生活をサポートするものとして日用品は不可欠な存在であり、消費者は商品の特徴をよく知っているからです。また、消費者は日用品の価格に対して高級品ほど敏感でもなく、また、サイトによって値段は大きくは変わりません。そのため、日用品などの消費財においては、消費者は商品を選んで購入するまでのプロセスがスムーズであるかどうかといった、ユーザーエクスペリエンスを重視すると考えられます。

コロナ禍におけるオンラインショッピング・サービス上でのブランディングとは?

オンラインショッピング・サービスは、主に利用者が商品を売買するバーチャルなマーケットとして捉えられますが、消費者とコミュニケーションをとる場所として、ブランド認知を高めたり、販売効果を上げたりすることもできます。そのような視点から見ると、ブランド担当者が消費者と円滑なコミュニケーションを取るには、ターゲットが普段どのオンラインショッピング・サービスをよく使っているのかといった情報はもちろん、サービスの利用状況の変化や重要視するポイントの変化も考慮に入れる必要があります。

パンデミックの長期化により、現在起きているオンラインショッパーの行動変容が定着する可能性もあります。もし、消費者が複数のサイトを閲覧しないのだとすると、日用品のブランド担当者は、例えば利用者の視線が最初に届くフロントページに自社の商品を表示させて自社の商品を目立たせるなど、様々な工夫をしていく必要があるでしょう。

購入までのスムーズな体験も重要視されていくと考えられます。オンラインショッピング・サービスによっては、既に「ワンクリック」注文や、サブスクリプション(および定期購入)型の定期便など、購入プロセスを簡易化、かつ習慣化させるモデルを運用しているところもあります。そのような試みは、日用品を購入する場合のオンラインショッパーの行動変容に適したものと考えられます。ブランド担当者は、ニューノーマルを見据えたうえで、オンラインショッピング・サービスの活用で、それらのモデルを検討することも選択肢になり得るでしょう。 パンデミックは、消費者の行動変容を加速させる可能性があります。行動変容の中には、事態が落ち着くことで昔のスタイルに戻るものもあれば、社会経済の変化に応じて、かつ消費者のニーズを満たすものとして残り、新しい行動パターンとして定着していくものもあるでしょう。消費者との関係性を維持するためには、このような変化を正確にとらえ、ブランドとしてどのように適応していくのか考え続けていくことが重要です。

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