今日のメディア環境においては、かつてない程、豊富な選択肢が用意されており、消費者は最も魅力を感じるプラットフォームやメディアチャネルを積極的に利用しています。広告主、媒体社、広告代理店は、視聴の場所に関係なく、消費者を惹きつけ、エンゲージメントを獲得し、それを測定しようとしていることから、選択肢の広がりは、正確な測定に対する業界のニーズを高めています。
ここで重要なのは、選択肢の拡大という流れの中心にいるのは「人」ということです。それゆえに、進化を遂げているプラットフォームやチャネルがもたらした、数多くの新たなデータソースを反映する包括的なオーディエンス測定がますます必要とされています。しかし、これらの新たなデータソースだけでは、母集団の人口を正確に代表していないため、オーディエンスの正確な測定を行うことができません。
実際のオーディエンスを測定するためには、実際の「人」が必要です。
長年、米国においてニールセンの計測パネルはテレビ視聴率測定のゴールドスタンダードとなっており、現在でもセットトップボックスやスマートテレビから取得するビッグデータのみでは発掘できない、テレビ視聴者に関する貴重なインサイトの提供に活用されています。一方で、新たなデータソースから得られるビッグデータセットには、とても大きな価値があります。それは従来のパネルではカバーしきれない、飛躍的に大きい視聴者サイズを提供しているからです。しかし、これらのビッグデータセットにはオーディエンスを特定できる情報が含まれていないので、包括的かつ代表性のある測定を行うためには、ビッグデータとパネルデータの併用が必要となります。
重要なことは、セットトップボックスやスマートテレビのデータは、測定用に設計されていないということです。例えば、ケーブルテレビや衛星放送のセットトップボックスから得られるRPD(Return Path Data)では、テレビの電源が入っていることやチャンネルが変更されたことは分かりますが、その部屋に誰がいるのか、誰が画面に映っているものを操作しているのかは分かりません。スマートテレビが提供するコンテンツ自動認識(ACR)データについても同様です。例えば、ニールセンがRPDを分析したところ、誰も見ていないのにテレビがついている場合を補正しないと、視聴時間が145%〜260%(プロバイダーによって異なる)も過大にカウントされてしまうことがわかりました。
デバイスやプラットフォームの使用率が高まるにつれ、ビッグデータには大きな利点があり、今後のオーディエンス測定において重要な役割を果たすことができます。しかし、実際の視聴者を総合的かつ正確に把握するためには、代表性のある「人」レベルのデータを確保する必要があります。例えば、ニールセンの最近の分析によると、あるゴールデンタイムの番組のRPD測定では、米国の総インプレッション数が69%も過大評価されていました。同じ分析で、ACRのデータはインプレッションを12%過小評価していたことがわかりました。
ニールセンが保有する米国の総人口を代表するテレビ測定パネルは、今や総テレビ利用の 4分の1 以上を占め、拡大し続けるストリーミング配信を測定する上でも極めて重要となります。ストリーミング配信は消費者に膨大な量や種類のコンテンツを提供していますが、ビッグデータのみでは、オーディエンスやエンゲージメントを完全に把握することはできません。またビッグデータはRokuやAmazon Fire StickなどのOTT ストリーミングデバイスでの視聴を網羅しておらず、多くのストリーミングアプリではアプリの利用中、ACRデータ送信はブロックされています。新たなプラットフォームやチャネルが次々と市場に参入していることを踏まえると、これからは主要なデバイスメーカーとの提携とともにパネルデータが極めて重要となります。
実在のオーディエンスのインサイトを発掘するには、実際の「人」から得られるデータが必要です。実際の「人」から得られるデータをその他のデータソースと組み合わせることにより、サンプル数を飛躍的に増やすことができます。ニールセンのパネルは、データ品質の問題を特定して修正する能力を備えているため、視聴者測定に使用するビッグデータの安定性、信頼性、一貫性を補完することができます。ビッグデータが「人」レベルの測定で調整されることで、セットトップボックスのRPDとスマートテレビのACRデータの可能性を最大限に発揮することができるのです。